大判例

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大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)1092号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(二) 被告会社の運行者責任

1 個人企業旅館緑風閣こと足立啓二の運行供用者責任

ところで本件事故車は所有名義は被告昌三に属するが、現在の被告会社代表者である足立啓二が本件事故前から、当時は個人企業として営んでいた旅館緑風閣の客の送迎用などに他の二台の乗用車とともに運行の用に供され、緑風閣の標示もなされていた。

そして事故時は被告昌三が右啓二の客をその命により送つていた帰途に起したものである。

従つて右各事実からして当時旅館緑風閣こと足立啓二が運行供用者として自動車損害賠償保障法第三条による損害賠償の責任を負つていたものである。

2 被告会社による運行供用者責任の継承

さて被告会社は右事故後である昭和三九年一〇月二二日資本金三〇〇万円で設立され、同日登記を了したものであるが、実質的には代表者啓二個人の出資によるもので、同人が所謂ワンマンカンパニーとして、個人企業時代と同様現在も実質的に唯一の経営者であるし、旅館業として商号に準じて重要な旅館名「緑風閣」を続用し、営業の実体も個人企業時代のそれを全部継承している。

また本件事故車を引続き旅客の送迎用など運行の用に供している。

そもそも会社の有限責任、営業譲渡の際の債務継承の制限は資本金乃至有機的な営業の自由なる離合を許して経済発展を目すると同時に債権者保護をはかる二つの社会的要請のかねあいの上にあるといえようし、商法第二六条の営業譲受人による債務継承の要件としてあげられた商号続用も実質的な同一企業の継続の色彩の濃度の徴表として把握すべきものであろうから、個人企業の時代の旅館「緑風閣」と旅館「株式会社緑風閣」との関係がたゞちに商号の続用に当らないとしても、右認定事実のように営業譲渡乃至現物出資として従来の企業「緑風閣」の実体が一括して(事故車の運行供用の権限もふくむ)被告会社に継承され、資本主も経営者も実質的には同一性を失つていない本件のような場合には、報償責任に重要な根拠をおく運行供用者責任のような債務については商法第二六条に準じて被告会社もまた弁済の責に任ずべきものとするのが相当である。

そうすると被告会社は足立啓二とともに同人の運行供用者としての本件事故による損害賠償の責任を負わねばならない。(舟木信光)

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